水の電気分解による水素の発生とその燃焼による暖房 [NT]
どうでも良い話。
電気ストーブはエアコンに比べると効率が悪い。電気を元に安価な効率の良い暖房器具は作れないものだろうか。
ふと、水を電気分解して水素を発生させ、その水素を燃焼させて暖房に使用したらどうかなと思った。しかし、それはそれで効率が悪そうだとも思った。
せっかくだから計算してみる。
12.夢の「水素エネルギー」開発今どこまで? によると
もっともクリーンな水素生成法はいうまでもなく水の電気分解なのであるが、電力自体のコストが天然ガスの4~5倍もする上に、エネルギー変換効率もよくはなく、アルカリ水電解法でも1N立方メートルの水素を製造するのに約4kWhの電力を消費する。
だそうだ。従って、水を電気分解して得た水素で暖房するためには、水素の燃焼による熱量が 4kWh に相当する熱量以上でなければならない。
発熱量について によると
例えば水素が酸素と化学反応(燃焼)した時に生じる熱量は28600【kcal/kg】(キロカロリー・パー・キログラムと読む。)です。
とのこと。では、水素1N立方メートルの発熱量はどれくらいだろうか。
環境用語集によると
1N立方メートルとは、標準状態(0℃、1気圧)に換算した1立方メートルのガス量を表します。
だそうだ。ということでここでは標準状態に限定して考える。
水素1N立方メートルを質量に直す。 1 mol = 22.4L、1立方メートル = 1000L だから、1立方メートルあたり 44.64 mol。水素分子の分子量は 2 だから 1 mol で 2g。44.64 mol だと 89.28g。水素の熱量は 28600 kcal/kg だったから、水素1立方メートルの発熱量は 2553.408 kcal。
資料 熱計算 日本ヒーター株式会社 によると
1 cal(カロリー)=1.163×10-6 kWh =4.186 Jとある。従って、4kWh の電力量の熱量 = 3439380.911435941530525 cal ≒ 3439.38 kcal。
となり、水を電気分解して水素を発生させ、それを燃焼するよりも電気で電熱線などを用いて熱を得た方が効率が良いということがわかる。
そんなのは熱力学の法則から当たり前だろという声が聞こえないでもないが。
なお、数式による計算は http://keisan.casio.jp/has10/Free.cgi を使うと便利である。
ところで、水素を燃やすと水しか発生しないというのは事実だが、条件によっては窒素酸化物も生じる場合があるそうだ。
仮に、水素をタンクなどで外から運びそれを燃料としてストーブ代わりに使用したとしよう。また、窒素酸化物も発生しなかったとする。しかし、水しか発生しないからといって締め切った部屋で使用し続けることは出来ない。なぜなら、燃焼により酸素を消費するから。
水素を燃やしても炭素が含まれていないから一酸化炭素は生じない。したがって、石油ストーブのときによく聞く一酸化炭素中毒にはならない。しかし、酸素欠乏症にはなり得る。結局、換気が必要になる。
換気をしたくないなら素直にエアコンか電気ストーブか床暖房、または排気を屋外に出すストーブを使いましょう。
こうした思考実験は面白いですね。酸欠にならないためには電気分解した酸素の方も一緒に燃焼させればいいんでしょうが、液体燃料ロケットじゃあるまいに、危険度マックスですね。
by takashi-inui (2011-02-13 21:51)